紙めくりて

本と文具好きのオタクがクリア冬のコスメで右往左往するブログ

2020.12.15 読了後の本感想

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読了後の本感想。気圧というより、気温差にやられてグロッキーなので控えめ。

徳川家の家紋はなぜ三つ葉葵なのか 家康のあっぱれな植物知識(稲垣栄洋)

戦国武将たちは植物を愛していた。

戦国武将たちの植物を使った知恵を中心にまとめた本。

日本史の本は数あるだろうが、植物の情報を紹介してこういった切り口の本はあまり見たいので面白いなと思った。江戸幕府が開かれた時の東京の様子や当時を反映した現代の地名について紹介しており、「あの辺りは昔はそうだったのか」と感心した。浅草や吉原は想像出来るのだが、巣鴨が菅茂に由来するだとか、蒲田は泥が深い田の鎌田かガマが生えていたことに由来してるとか。家康が大規模な河川工事をしたことは知っていたが、東京は本当にごりごりの湿地帯だったんだ。

各項目が短めなのでさくさく読めるのであるが、細切れ過ぎて物足りない気持ちになる。しかし、様々な知識が出てくるので知識欲を満たしてくれる。読み物としてはとても楽しいし、気楽に読める。世の中に日本史の本はたくさんあるので、こういった新しい切り口の本は新鮮。

 自然と科学の間で繰り広げられる大いなるジレンマ 絶滅できない動物たち(M・R・オコナー)

種を絶滅させないため、お金と手間をかけて懸命な人間と隔離される動物たち。自然環境とは乖離しすぎた環境で生かされているとも言える状態に、ふと「このまま絶滅してしまった方がいいのでは?」そんな疑問が頭を過ぎる。 自然保護と種の再生を考えるノンフィクション。

読み進めれば読み進めるほど、種の保存が簡単な話では現実にぶち当たってしまう。

本書では「キハンシヒキガエル」「フロリダパンサー」「ホワイトサンズ・パプフィッシュ」「タイセイヨウセミクジラ」「ハワイガラス」「キタシロサイ」「リョコウバト」そして、「ネアンデルタール人」様々な種の保存や再生の事例を紹介している。

貧困撲滅を目的としたダム開発と環境保護の板挟みになったり、紛争地域で権力闘争に翻弄されたり。個体群の回復を目的に遺伝子強化目的の異種交配、冷凍保存したDNAを使って個体を誕生させる試み。さらにゲノム編集で種を蘇らせようとまでする。

多くの種が人間の傲慢によって絶滅に追い込まれている。リョコウバトなどその際たる例だ。では、ある種を保持・復活させようとするのもまた、人間の傲慢ではないのか。いずれにせよ、一度人間の手が関わった生物はもといた環境に戻れる保証もなく、その環境が既に存在しないことも多い。戻したとしても、異種交配などで増やした動物を自然に離すことは更なる環境破壊を生むのではないか?そこにはない微生物や病気を持ち込まないか。生態系を崩すのではないか。はっきりとした答えのない疑問が浮かぶ。

全体を通して、著者が動物をとても愛しており、この問題に真摯に、熱意を持って見つめていることがわかる。この話は突き詰めると根底には自然や種に対する倫理観や哲学と複雑に絡み合っているせいなのか、文体は少し哲学的に感じる。

内容はとても面白く興味深いのだが、翻訳の癖なのか全体的に読みにくい。