紙めくりて

本と文具好きのオタクがクリア冬のコスメで右往左往するブログ

2020.12.14 読了後の本感想

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読了後の本感想。走り書き

 脳が「生きがい」を感じるとき(グレゴリー・バーンズ)

人が満足を覚えるとき、脳のどこが働いているのか。以前は動物実験か過去の実験を参照するしかなかったが、fMRI(機能的磁気共鳴画像)で実際に見ることができるようになった。著者はfMRIを使って、脳がどのようにして報酬を感じているかの実験を解説している。全体的に私小説的な文章で進み、満足を感じながら充実した生活を送るにはどうすればよいか?結論が示唆されているわけではない。

著者は満足とは、快感の追求ではなく「新しさへの欲求」としている。その中でも満足(喜び)と成り得るのは、食べ物、お金、セックス。と例を上げているのだが、食べ物は実験しやすいがお金以降は実験が難しくなっていく。

人は選択肢を持つこと自体に価値を求めていて、価値=お金ではないとする。引用すると”人がより多くの金を欲しがっているように見える理由が、具体的に物を得るためではなく、可能性を増やすためだとすれば、何かにお金を使っても心は思ったほど満たされない理由にも説明がつく。”と記している。これには納得感があった。

また、ヒトの中隔野に電極を刺し、刺激する実験が既に過去行われていたのには驚いた。時期的にはアイスピックロボトミー薬物療法の境ぐらいのようだ。ヒトの報酬系として中隔野への刺激を選択していたようだが、これは無条件に快楽に繋がるものではなく、人格や気分の根底にある感情を増幅する。よって、暴力的な患者は事例は恐ろしかった。思考や感情は外からの影響を受けやすく、どう変わるかは予測できないことが明らかだから。この実験は当時巷で洗脳への恐怖が広がっていたため、かなり非難の的になったようだ。

しかし、痛みが快楽か?とSMバーに行って見たり、若干の迷走を感じる。引用すると”つまり脳の深部において痛みと快感はたいして違わない。肝心なのは新しさなのだ。”なるほど……?

セックスに至っては上手い実験方法が出てこなかったのか(実際fMRIは狭いし、その中でセックスして下さいなんて、倫理委員会が許可を出すとは到底思えない)妻との夜の改善関係の話になる。いや、それは流石に勘弁してくれと思う。最終的には”妻を、子どもたちの母としてではなく、15年以上前に出会った官能的な女性としてみていた。(略)ウルトラマラソンのランナーに見えた様々な超越感に似ていなくもない。何であれ、それは現在の科学で分析できる類のものではなかった”

分析しろよ!なんで奥さんとの盛り上がった夜の話を聞かされるだけの節になってるんだ。

エピローグも少し詩的に思え、煮え切らない。脳は「新しさ」を手に入れると満足する。それはまだいい。しかし、やがてそれにも慣れるというのも経験があるはず。では、人間は新しいものに飛びつき続ければ満足するのだろうか?今一つ、はっきりとした解が得られず、もやもやした。まだまだ未知の領域なのだろうと思う。これは2009年の出版本なのだが、ここから知見は動いたのだろうか。