紙めくりて

本と文具好きのオタクがクリア冬のコスメで右往左往するブログ

2020.12.4~7 読了後の本の感想

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読了後の本感想。走り書き。一部自学の本を含む。

世にも奇妙な人体実験の歴史(トレヴァー・ノートン

本書は性病、毒ガス、寄生虫、麻酔薬、放射線など、人類への脅威を解明するために、己の肉体を犠牲に果敢すぎる人体実験に挑んだ科学者達についてまとめている。

近年自分で大腸カメラを挿入してイグノーベル賞を受賞したニュースがあったが、本書の内容はそういうレベルではない。いや、どうしてそうなった。と言うレベルの人体実験の数々である。

今の世に読めば狂人奇人たちの実験だが、読み進めれば人体実験にも全て動機があるとわかる。ただ、これにはどうしても誰のための実験か、誰を用いて実験するのか。そういった問題が付いて回る。患者のため人体実験をする自分自身のため、国家のため……とまでなってくると少し恐ろしい。だが、戦争の狂気の中では国家のためというあってないような動機で繰り返された実験もあるのも事実だろう。

動機に妥当性があればいいものではない。この辺りは犯罪と同様だ。動機に妥当性があれば何をしてもいいと言うものではない。この線引きにおいて動機の方が重く捉えられる、そんな現代とは異なる価値観の時代があったのとだと本書を通して理解できる。

現代でも人体での実験と言うものは切っても切り離せない。医薬を提供するのが人間である以上どうしても切り離せない。動物は人間と同じ言語を話さないという側面もあるし、細胞だけではどうしても不足部分がある。例えば頭痛がする、吐き気がするなどの副作用は人間が服用してみないとわからない。今は人体への実験は倫理が優先されると決められ、審査委員会を通らないといけないことになっている。だが、その実験の積み重ねが市販薬にも付いている添付文書だと思う。普段関心がない人は添付文書を読んでみて欲しい。

本書に載っているのはいずれも変人奇人の行いばかりに見えるが、その多くは発展し、現代の医学に繋がっている。今では様々な治療を受けるとき、インフォームド・コンセントに基づいて治療を受けるように決められている。つまり、受けるか受けないかは、患者本人が決める。勿論第一選択はある、医療者からのオススメもあるだろう。だが、最終的にどの治療を受けるかは自分で決める。それがインフォームド・コンセントだと私は思う。本書内でも触れられているが、これはある意味自分の命をかけた人体実験に参加するということでもある。貴方は、自分がもしくは肉親が人体実験に望まなければならないとき、正しく判断できるだろうか。本書を通して思いを馳せてみて欲しい

 

以下、ちょっと個人的自学のための本なので、感想らしい感想はあまりないのだがメモ

 

高次脳機能障害とともに 制度の谷間から声をあげた10年の軌跡(NPO法人日本脳外傷友の会)

 日本脳外傷友の会は2000年に発足した会で、その10年のデータをまとめた本。

本人や周囲の家族。医師やセラピストからの寄稿をまとめている。

2011年の本なので情報が少し古いのと手作り感あるが、とてもリアルな声が纏まっている。見た目よりも報告書感覚でさくさく読めるが、内容と当時の心境を思うと胃が痛くなる。

高次脳機能障害とともに -制度の谷間から声をあげた10年の軌跡

高次脳機能障害とともに -制度の谷間から声をあげた10年の軌跡

  • 発売日: 2011/01/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

高次脳機能障害者の世界 私の思うリハビリや暮らしのこと(山田規畝子)

これは高次脳機能障害者目線の本。

著者は元医師で、自身の生活について、リハビリについて、何を思ってどうしているのか。生活レベルの話を細かく紹介している。10年と比べると高次脳機能障害の本は増えたが、それでもどちらかと言うと病気の説明が多い。生活レベルの話がまとめてある本書は結構貴重なのではないかと感じた。これはどんな病気なんだ?というよりも、この障害とお付き合いしている人やそれを支える周囲の人が読むととてもためになるのではないかと思う。Q&A形式でよく聞かれることに答えてる形式。文字も大きく比較的さくさく読める。

 

Q&A 脳外傷 高次脳機能障害を生きる人と家族のために(NPO法人日本脳外傷友の会)

 脳外傷をメインに高次脳機能障害についてまとめた本。上記3冊に比べると、現在の法制度や支援制度に付いての情報が質問形式で纏まっている。この手の制度関係は難しいので、学生の時に読みたかった。外国での支援体制についても簡単にだがまとめてあり、日本との比較も出来る。

関連書籍の紹介や支援団体の情報もまとめてあり、家族やセラピストが読むにはよい本だと思った。私が読んだのは第3版で2010年発行で、少し古いのが残念。