紙めくりて

本と文具好きのオタクがクリア冬のコスメで右往左往するブログ

2020.12.19~21 読了後の本感想

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読了後の本感想。だけども、血祭りで虚無抱えてるので自学物が多い。

見てわかる、迷わず決まる配色アイデア 3色だけでセンスのいい色(ingectar-e)

配色デザイン本。ツイッターで見かけて手に取ったやつ。

テーマやカテゴリーごとに、3色パターンをまとめている。

確かにお洒落だなぁと思うし、格好いいなとも思うのだけれど。

実際に使おうと思ったとき、例えば動画やWebサイトなんかで使おうと思うと、文字と背景のコントラスト?が強くて文字が読みにくいなと思った。

本当に少しだけビジネスシーン向けの配色パターンもあるのだが、P200のグラフ配色は実際持ってこられたら「は?」と思ってしまいそう。これ、カラーじゃないとグラフが読めないし、ぱっと見て何が訴えたい数字なのか全然わからない。確かにお洒落なんだけど、グラフに求めるのってお洒落なんだろうか……

P204とかは、もうコントラスト??文字が物凄く読みにくくて、色んな人が読めるようにあるべき病院Webサイトとしてはダメなんじゃないかと思った。いや、お洒落なんだけど。

あと全体的に女性向けイメージが多いように思う。一応カラーコードは表示あるのだが、その通りに印刷で出るかはまた別だろうと思うし、フォントによって見え方も変わってくるので……フォント名まであると親切……?なんだろうか。わからん。

というか、こんな配色ホントに印刷で再現できるんだろうか……。

色をたくさん作って、カラフルにすればお洒落。見やすい!と思っている人からすれば、「矢鱈と色を増やさなくてもこんなにお洒落になるんだ」と言う発見はあるかもしれない。

私はそもそも手帳でも書類でも、色がドシンプルで文字が多くなりすぎてしまうタイプなので、逆にどこで使えばいいのかよくわからなかった。

ビルディングタイプの解剖学(五十嵐太郎、大川信行)

歴史的背景から読み解く近代建築史の本。教会・学校・倉庫・工場・監獄・病院・動物園・万博など、近代資本主義社会が生んだ典型的な空間の内側を解説している。

監獄の建築的な構造が知りたくて探してきた。かなり古い本で出版は2002年。アマゾンだと中古しか取り扱いがなく、定価の3倍?ぐらいの価格になっている。こっわ。

私は図書館で探し、結局書庫から出てきた。自動貸し出しも非対応。わぁお……。

監獄は3章の「矯正」に載っているのだが、近代に至る前の牢獄船から歴史を振り替える。監獄熱ってなんだ?と思ったら発疹チフスのことらしく、しらみなどのリケッチア感染症だった。もうこれだけで当時の不衛生さがわかる。監獄は常に戦争してるし、不清潔で空気淀み湿度が高く食事も少なくて極貧だった様子が即想像できた。よって、監獄は収容されるとほぼ生きて出れない場所だったらしい。

その後、ローマのサン・ミケーレ病院内の少年矯正所を紹介している。このサン・ミケーレの矯正所は、監獄建築の歴史において重要な平面形式の初期の例となる。

近代において監獄の近代化が最も進んだのはアメリカで、その監獄建築を細かく説明している。ホラゲとか映画で見たような構造がちょくちょく出てくる。ゲームは意外とリアル。ゲームしてる方が歴史に詳しくなれるかもしれない。ゲームってよく出来てるな。

その後監獄は、テレフォン・ポール型平面形式に発展していくのだが、この形式は学校や病院、研究所などに多く見られる平面形式となり、20世紀にこの形式が増殖する。

最後に、死刑実施方法についてもまとめている。監獄の発展には、看守やコストの削減。衛生観が追及された結果で、同様に死刑の執行方法にも衛生観を追及した。見せしめとしての死ではなく、苦しませず死ぬ方法を求め、執行人の心の精神衛生も追及していく。

私は死は死であると思うし、死の衛生観と言われてもぴんと来なかった。しかし、古い本ではあるがとても近代建築の歴史をまとめたよい書籍だった。建築と聞くと難しいイメージがあったが、歴史と密接に関係し発展してきたことがわかった。

ナチ強制収容所における拘禁制度(ニコラ・ベルトラン/ステファン・エセル)

ナチ強制収容所というと、看守達による暴虐が横行していたという先入観がある。しかし、実際には詳細な拘禁制度が存在し、適用された結果の地獄を分析した本。

かなり細かく規範が存在し、懲戒、強制労働、配給食、郵便、死刑制度などを記録文書を元に追っていく。本書はとても淡々としており他書のような生還者の生々しい証言などはない。だが、文章だけをさらっと読むと「それっぽく見える」のが、恐ろしいと感じた。私は特にこういう法規が苦手だと感じているので、「規制された地獄」とはこういうことなんだと思った。

拷問は感情に任せて行われていた印象があったが、拷問にも細かい規定があった。処刑はできるだけ本人と同じ民族によっておこなわれ、携わった囚人には報酬が出る。人間の心理学を把握した演説をしていたことは知っていたが、こういった所も存外システマティックだ。本書で紹介されている業務規定は、存在しているだけで関係者が良心の呵責を覚えずに済む。規定で決まっていることは全てやった。もし、囚人が餓死してもそれが自分のせいではない。と自身の行いを正当化できる。

結論において著者は「社会におけるすべての悪への万能薬とされる規制は、非人道的な行為を同じように正当化するために使われているのではないか?(略)武力行使を規制すれば戦争がもっと思いやりのあるものになるのか?それとも規制は、複雑な手続きを踏んでからしか攻撃の火蓋が切れないきれいな戦争、そんな印象をむしろ当事者に与えることで、武力行使の正当化を正当化を狙っているのではないか?」と疑問を投げ掛けている。

著者は収容所関係者を、ルールに従い、思考欠如で実直な規範的人間と位置づけている。ルールを守るべきである、と考えるのは、ルールが「悪」から国民を守ってくれると信じているからこそ成り立つ。しかし、国は必ずしも「善」ではない。「ルールを守ること」と「そうすることが正しいこと」を同一視していないか。悪法であれ法に則っていれば理不尽な行いも合法になるのか。法の究極の課題だと感じた。