紙めくりて

本と文具好きのオタクがクリア冬のコスメで右往左往するブログ

2021.04.17~04.21 読了後の本感想

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私の春が来ました。待ってた。コナンの映画!やったー!!

怖い絵のひみつ。(中野京子

表紙見たら手に取らずに居られなかった。怖い絵展の図録が実家に置いたまま感染症もあり取りに戻れずうぐぐぐぐってなってたので……わーーーーい!すき!!

「怖い絵」展で展示された名画について著者が解説したのが本書。

これ読んでから展示を観に行ったらもっと楽しかったんだろうなぁと思いつつ、読まずに行ったんだよな。凄くよかったので、この展示の第二弾をやってほしい。でも、表紙クラスの名画、この情勢じゃ呼べないんだろうなぁ……。

著者の他書の怖い絵解説もある程度読んでいるともっと楽しめる。

第五人格好きな人はニヤっと出来ます。本書では、ウォルター・リチャード・シッカートの「切り裂きジャックの寝室」も紹介されています。そう、あのリッパー。ホガースの「ジン横丁」なども紹介されていて、有名所をきっちり押えている感があります。一見華やかな世界と貧困地区の生々しい貧しさ。怖いのに惹き込まれるような絵画が多く紹介されています。好きです。

怖い絵のひみつ。 「怖い絵」スペシャルブック

怖い絵のひみつ。 「怖い絵」スペシャルブック

  • 作者:中野 京子
  • 発売日: 2017/07/19
  • メディア: 単行本
 
図説 人魚の文化史 神話・科学・マーメイド伝説(ヴォーン・スクリプナー)

友人が乱れたリズムで踊って人魚の寮に情緒狂わされているけど、人魚ってそもそも女性じゃないのか?え、そのキャラ男なの?と思って手に取った本。

本書では、時代背景とともに人魚像や人魚の役割を神話・宗教・科学・資本主義等の多様な角度から検証している。文系のガチ勢論文といった感じ。出典がすごい。世界各国の凄いところから来てる。すごいけど、なんだかんだ苦手分野だったらしく眩暈していた。私には気合が必要な書籍。写真やイラストは多くあるが、図説、の定義を一度出版社とすり合わせたい。私の考える図説と世間の図説は違うのかもしれない。

少し読むと分かるのだが、序盤の挿絵は意図が露骨な部分もある。いや、それ春画じゃないのか。マジか……。人間こわい。

西洋におけるマーメイドとマーマンは、初期のキリスト教会による影響が色濃く現れている。古代に知名度があったのはむしろ男性の見た目をしたマーマンの方で、バビロニア人の魚神オアンエスがある。ただ、ペリシテ人やアッシア人、古代イスラエル人は、オアンネスの女性版、豊饒の女神アタルガティスを作り出している。愛と肉欲の危険を象徴していた点が注目され、初期のキリスト教会が敬虔な信仰や自制といった教えを伝えるためにマーメイドの存在を利用した。マーメイドの主な起源は、男の持つ性欲と権力欲を利用して男に破滅をもたらそうとする恐ろしい怪物で、性と欲情と権力の寓意が含まれている。昔からレイプや暴力と結び付けられてきたのはマーマンの方だが、初期のキリスト教会には女性性を貶めるという任務があったので、男性像は不要だった。よって、聖職者たちは自分たちが利用しやすい観念に変えようとした。ハイブリットの怪物だったマーメイドは、女性らしさを強調した姿で妖艶で誘惑の言葉を囁く現代のマーメイド像に変容していく。

こんな背景があれば、女性蔑視の社会になっていくのも当然の帰結になる。ルネサンス期には女性は社会の付属物となっていく。そんな時代背景が「怖い絵のひみつ。」などでも取り扱われていた、切り裂きジャックの暗躍した世界やジン横丁のような社会の闇を色濃くしていく。社会的に生きていく術が限られている女性は娼婦になり最終的に多くは自死を選択していった。マーメイドとオフィーリア・コンプレックスを並べると、人間救いようがないなとすら思えてきてしまう。

しかし面白いのは、大航海時代の探検家達や啓蒙時代の科学者、19世紀の興行師、20世紀以降も世界中の人々が様々な目的のために人魚を利用して来ているところだ。人間逞しいし図々しい。自分の欲望を実現させようとあの手この手で試行錯誤し、かつて信じていた真実が否定されるとまた世界の欠片をあちこちから集めて新たな現実を作り上げようとする。これだから人間は……。

訳者あとがきにある、勢力拡大を目論んで、時の権力者に自分を売り込み、協会の片隅から大陸を跨ぎ海を渡って、インターネットに載って世界各地で子孫繁栄に成功した人魚の図。図太い人間を逆に利用している人魚の解釈。とてもえもいなと思った。

序文で紹介されている歴史学者エリカ・ファッジの「動物について知ることは、例外なく人間を知ることである……逆説的な言い方をすると、人間は人間であるために動物を必要としている」私はこの言葉に少し救われたように思う。動物に詳しくなっても、人間社会に貢献はしないのではないか?との予測が、私の頭の片隅にはあったのだと思う。けれど、動物を知る事も、怪物理論やハイブリット生物研究への知見も、人間の本質の解明の役に立つ。一休さんのような屁理屈かもしれないが、私には救いのある言葉だと感じた。

スーツ★STUDY(毎日ブック)

副題「男子の心得「スーツ」のセオリーを5大セレクトショップが徹底指南します。」

スーツのムック本。まずスーツの部位名称が分からないので、呪文が永遠と並んでいる気持ちになる。でも、一応各パーツや形の図柄が紹介しているので、絵の参考にもなるかとは思う。でも呪文……。一応手入れに付いても紹介しているので、パンフレットと言う感じ。詳しい人にはパンフ以下かもしれない。初心者向けなのに、出てくるスーツ着用例が壮年期?の方ばかりで少し困惑。本書における対象層が迷子だ。初心者向けとしての書籍なら、同じく青年世代の着用例を持ってくるのが、本書のコンセプトと構成を見ると自然ではないか。今一つ物足りない書籍だった。

スーツ☆STUDY (毎日ムック)

スーツ☆STUDY (毎日ムック)

  • 発売日: 2011/03/03
  • メディア: 単行本
 
中野京子と読み解く 名画の謎 ギリシャ神話篇(中野京子

ギリシャ神話を題材にした絵画の解説をした本。ギリシャ神話は少し齧った程度で造詣は殆どないので、神話の解説も一緒にしているので丁寧だなと感じた。どこもそうだが、神話で描かれる神様像は、神々しいんだが人間臭いんだか見解に困るなと思う。どこの国でも人間着地するのは似たようなところということなんだろうか。あとややこしい。まぁ、ややこしいのはどこの国の神話もどっこいだとも思うのだが……古事記も十分ややこしい。比較的丁寧に解説されているので、へーと思いながら読める。これはこのモチーフだとか、この神話の話を描いているのでここにこの小物が描いてあるだとか、知らないと見ないところの解説もあるので楽しい。

絵画の印刷がキレイに出ているとは思うのだが、大きなサイズだと見開きで分割されていたりするので、その点は若干不満はある。うーん見にくい。

名画の謎 ギリシャ神話篇 (文春文庫)

名画の謎 ギリシャ神話篇 (文春文庫)

 
中野京子と読み解く 運命の絵(中野京子

運命の絵をテーマに、絵画のエッセイをまとめた本。絵画を鑑賞するときに、描かれた背景や画家の思惑などを知れば絵画鑑賞はもっと面白くなる。

今回、やけに絵画の本ばっかり読んでるでしょ?

今回周回したのが芸術系の棚だったからです。分かりやすいですね。私は書店も図書館も棚で周回するので、こういうことが稀によく起きます。

本書は運命の絵がテーマなので、絵画の解釈だけではなく世界史の話も知れる。一度で二度お得。世界史に精通してる人だと、色々思うところはあるのかもしれないが、世界史の学がないので新鮮で面白い。こうやって勉強すれば西洋史も面白いのになぁ。学校で勉強するとなんであんなに面白くなかったんだろう。

ナポレオンが片手をチョッキの内側に突っ込んでいるのは、当時のズボンにポケットがなかったからという記述を読んでへーーーー!!!となった。そういう服装の歴史になってくるのか。本書にはオランダでの木靴の話も出てくる。知らないことがたくさんあって楽しい。しかし、この著者解説の引き出しの幅が広くて感嘆する。文体自体も時々ふふっと笑いながらサクサク読めてしまう。不思議な文体だ。難しい話をしているはずなんだけどな。不思議。

でも、やっぱり大判の絵が見開きで分割されちゃうのはすごく気になる。

中野京子と読み解く 運命の絵

中野京子と読み解く 運命の絵

 
怖い絵3(中野京子

西洋名画に秘められた恐るべき怨念・冷酷・非情をまとめた美術エッセイ。

今週は黙々と西洋絵画の棚をひたすら読む週になってる。本当は、絵のシンボルや寓意を調べたかったんだが……。思ったような書籍を引けなかったので、知ってる著者の名前の書籍をまとめて引き抜いていたうちの1冊。そこにあったので大きな理由もなく、突然3巻から読み始めた。しかし、これ単体で書籍として成立はしているので、読む分には困らない。

テーマはタイトル通り怖い絵。怖いというと色々な怖いがあると思うのだが、率直にグロテスクなものや見た目は怖くないが背景を考えると怖いなどもある。怖いって幅広い感情だと思う。ホラーって難しい。

ホーガスの「ジン横丁」も掲載されている。はい、好きなやつです。私の中で、見て一瞬で分かりやすく怖いと思う絵。でもタッチも構図も好き。

本書内でエッセイとして好きなのは、伝ブリューゲルの「イカロスの墜落」

”理解できないことは、無いと同じになってしまう。”

この一文で、深い怖い絵だと感じた。絵だけではなく、当時の時代背景とそれに対する考察までを含めた上での怖い絵。深いなぁ。

今の情勢にもこういう心理の人は居る。例えば感染症なんてない。偉い人たちのデマや陰謀で、マスクなんて必要ないと主張する人たちの心理に近いと推察する。理解できない、見えない、見ていないので、彼らの中では感染症なんてないし、パンデミックも起きてないのだろう。こういった心理はこの絵画が描かれたこの当時にもあり、それを絵として描き表現している。すごい。絵描きや漫画家でも、絵が上手いだけでは物足りないと感じたり、逆に絵がとても上手いわけではないけれど面白い惹き込まれるような絵や漫画があるのも、自然な話なのかもしれないと感じた。

怖い絵3

怖い絵3

  • 作者:中野 京子
  • 発売日: 2009/05/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)