紙めくりて

本と文具好きのオタクがクリア冬のコスメで右往左往するブログ

2021.04.22~04.30 読了後の本感想走り書き

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黙々と図書館と書店を周回している。

図説 英国社交界ガイド エチケット・ブックに見る19世紀英国レディの生活(村上リコ

前に読んだ英国貴族の本が面白かったので、同出版社の同著者の本を手に取ってきた。

エチケット・ブックは英国貴族のマナーHow to本みたいなもの。中流階級からなんやかんやあって上流階級の仲間入りした人向けのマナー本。

いやぁ、ややこしい。よくこれで生きてこれたなってレベルで堅苦しい

私が一番ビックリしたのは喪中の長さ。故人との関係や男女で違うけど、女性だったら最長2年が最低ライン。どこまでも自主喪中はOKって長い。服も色だけではなく、生地の質感まで指定があるのがすごい。ドレスの黒染め業者が居るのにはふふった。

出てくる料理の話が出てきたり、詳しい上に専門的な情報が載っていて面白いし、創作資料としても耐えうるものだと思う。

あとがきで著者は「エチケット」は苦手。空気を読めも苦手。と書いてあり、階級社会に疑問を抱いているとまで書いてある。ただ、本書の内容としてはそういった心境は透けず、当時のエチケットブックを参考に淡々と情報をまとめているのが好感が持てる。

最後にエチケットはどこへ行くのかの章が、よかった。エチケットとは世間が人々に求める理想像が形を持ったものだ。そして、行儀のいい振る舞いとはどういうものか。英国社交界だけではなく、現代日本にもあるマナーに対しても、疑問を投げ掛けられている気分になった。

図説 英国貴族の暮らし(田中亮三)

英国貴族の暮らしを紹介する本というよりは、著者にご縁のあったカントリーハウスの紹介本という印象。他書も並行して読了しないと、これ1冊では物足りない。また図説、とはあるが説明は殆どしていない。英国のカントリーハウスの写真資料はたくさんあるので、アルバムとしては楽しい。

著者はカントリー・ハウスの書籍を出しているので、カントリー・ハウスに偏るのも当然かもしれない。また著者自身が実際の侯爵や伯爵と知遇を得て、館を訪れ直接話しをしていることは大変貴重。貴族達の感情や意思のようなものが感じられるのだが、解説書のような書き方ではないので、文体として違和感は感じた。

図説 英国貴族の暮らし (ふくろうの本)

図説 英国貴族の暮らし (ふくろうの本)

  • 作者:田中亮三
  • 発売日: 2015/01/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
年収90万円で東京ハッピーライフ(大原扁理)

年収90万円で、誰よりもハッピーに暮らす方法をまとめたエッセイ本。

動画で紹介されていて手に取った本なのだけど、うーん……こういう生き方もあるのかな。といった感想。読み物としては面白いかなと思う。どことなく腹の立つ文体だが面白いから読める。達観していて無欲な著者だが、これが全人類出来るかといったら無理なので、生き方の参考にはなるが再現性はない。

著者は結婚願望はないし、貧困家庭育ちだというが素の能力は高いことは分かる。旅行時も友人宅に泊まったりしているようなので、単純にコミュ力お化けというやつなのか?ただ、40代ぐらいになったらどうなるんだろうとは思う。ずっとこのまま生活できるんだろうか。

ただ、こういう生き方もあるんだ。死なないラインで稼げばいいんだ。と思えると救われる層が居るのも確かだと思うし、そう出来るような社会と福祉が実現しているのが現代の日本だと認識している。広い世界を知るという意味では一読の価値はある。

以下余談。

食事は、間違いなく低タンパク低カルシウムなので健康的な食生活として参考にするには短絡的。高齢になったときに寝たきりのリスクが不安。

野草狩りの章もあるのだが、人の所有地や国の所有地で一般的な河川は大体国の所有。そこで採集するのを泥棒と言う。勘違いした人が畑から採取したりして、田舎では猪と同列の害獣なので場所を選びたい。あと、野蒜(のびる)美味しいと書いているのだが、野蒜は毎年有毒植物との見間違いによる中毒事例が出ている植物。野草狩りはきちんと知識を行いたい。キノコは詳しい人でもミスする食べ物代表だが、野草も専門家でも難しい時がある。

年収90万円で東京ハッピーライフ

年収90万円で東京ハッピーライフ

 
若い読者に贈る 美しい生物学講義(更科功)

簡単に言うと、生命ってなんだろう?を書いた本。

若い読者とはあるが、著者も書いている通り若くなくてもOK ただ、内容としては小中学生はちょっと難しい。対象年齢としては講義とある通り大学生以上の文系かなと感じた。美しいとはあるが、美しいはよくわからない。うつくしい……?感動も同様。これ読んで感動できるほど私の情緒はガバではなかった。喜べいいのか悲しめばいいのか……。あと、冒頭にも書いているが内容は厳密に言えば生物学ではない。生物学でもあるけれど、化学も哲学も含む。広義的な科学といった方がニュアンスは近い。

文体は講義調で、話口調になっている。きっちり文体じゃないといや!とかもっと砕けて欲しい!とかこだわりがあるともやもやする。私はこれを講義されたら、指導案がとっちらかっていて美しくなくてキレると思う。構成が美しくない。だが、まぁ一応講義ではある。

全体的に凄く親切な生物学の本なのだが、マクロの細胞から進化論まで走っていくので、1冊で美味しいと思うか内容が浅くつまらないと思うかは人それぞれ。イメージとしてはぎゅーんと寄っていた顕微鏡画像から地球単位に引いていく感じ。実際スライドで見せられると情報に酔う……。浅く広く過ぎて「これは!」と思うようなエピソードが思いつかない。とても親切な生物学の本ではある。けれど、各所で絶賛されるほどの書籍かと言われると少し思い悩む。図は殆ど挿絵しかないレベルで少ないので、文章をたくさん読めない人は多分苦痛。講義だと、もうひたすら講義を聴いている形なので、私が学生なら内職始めると思う。

自分に嘘をついて「いい人」を続けるのはもうやめなさい!(潮凪洋介

生き辛さから解放される40のメソッドを紹介する本。いい人と自分軸のある人で節の最後にまとめがシンプルにまとめてあるので、サクサク読める。内容としては自己啓発本?になるのかなぁ。章は、ストレスと男女関係、仕事、キャラ変が分かれている。キャラ変って……あまり自己啓発本ではみない表現。あ、面白いなぁと思ったのは、最後の章で「いい人」を辞めたとしてもこれはだめ!と言うものをまとめているところ。内容としては、著者の考えるいい人の特徴とこうすればいいと言う主張を書いている。まぁ、エビデンスは薄いので著者の主張を延々と聞いている感じ。ただ内容への納得感はある。そんなにおかしいことは言っていない。私も「そうだよな」と思うのだが、それがサクサクできれば困らないんだよなぁと思ったりもした。寝る前にだらだら読むのにちょうどいい。

あなたのなかのやんちゃな感情とつきあう法(金城幸政)

「みんなと仲良く」「人間関係は波風立てずに」「どんな相手も、ゆるさなきゃ」
なんて、いつの間にか思ってませんか?そんなんじゃ、幸せになれない!感情は抑えられないし、なかったことにはできない。人間関係の問題解消のコツはシンプル。湧き起こる感情を丁寧にひもとくこと。感情と丁寧に向き合うという、本当の意味での「感情的に生きる」ことを提案している本。

序章部分が漫画の効果ふきだし?みたいなので囲ってあり、これを読みやすいと感じるか、うるさいと感じるか、怖いと感じるか。3ページぐらいで感じ方に差がありそう。ページで節が分かれていないのだが、節タイトルや主張したいところのフォントサイズに変化が付いているので、割と読める。メリハリがある分、文字苦手な人でも読めそう。

感情を溜める事の例えを醤油で話しているのは分かりやすい。ちょっと付ける分には美味しいけれど、1Lはとても飲めない。感情も少しあればスパイスだが、溜めるものではない。との主張は、ははーなるほど?と思った。

前半部分は納得できる部分もあるのだが、後半に行くにつれて灰汁が強くなってくる。えぐい。新興宗教みのあるえぐさ。うげーと思ってしまった。

本音は必ず相手のためになるという前提で生きるという節があるのだが、そこで会社にわざわざ様子をみにくる社長夫人の話が出てくる。それに著者がガツンと言ったというエピソードだ。同僚達は「もうよせ」と止めてはきたが、内心からはもっとやれと聞こえてきたと。幻覚では??

言っていることが正しければ何でも本音で言っても言いのだろうか。それはやんちゃな感情と言っていいのか。本音だったら相手を刺し殺してもいいのだろうか。著者は結局会社をクビになったが、社長夫人はもう出てくることがなくなり職場は平和になったそうだ。そりゃ、毎日やってきていた夫人が来なくなり、ブレーキのない著者がクビになった。一石二鳥だなぁ。世界は愛で出来ていて、全ての感情はよいもの、必要なものだと言う主張なのだが……これ、完全にDV男かサイコパスの主張ではなかろうか。

お守りをたくさん買う人は悪魔に好かれる人だそうで……まぁ、確かに?変なものから身を守るのがお守りなら、周りは変なものだらけ。悪魔や悪いものからすれば、カモの目印と言うのも、まぁ、わからん事もない。ところで日本の宗教の流れと穢れの概念って知ってる??この世界八百万ぞ??日本における神は二側面を持つので荒神にもなる。

でも、コメント大絶賛なんだよな……前半部分は「なるほどなぁ」と思って読んでいただけあって、後半のなんとも言いがたい残念さがある。総合的には慇懃無礼なブレーキのないオラついたおじさんの本だった。残念。

あなたのなかのやんちゃな感情とつきあう法

あなたのなかのやんちゃな感情とつきあう法

  • 作者:金城幸政
  • 発売日: 2016/07/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
 やりたいことを全部やる!メモ術(臼井由妃)

「メモの書き方」を教える本ではなく、「書き出す」ことでムダを見える化し、最短距離でゴールに到達するノウハウを伝授する本。

本書で強調されているのは、「1書き出す→2捨てる→3集中する」の3段階方式。

今気になっていることを全部書き出して、優先度を仕分けし、本来の目標や夢に繋がることを優先的にやっていこう。と言う考え方。この仕分け自体はそれほど目新しい考え方ではない。7つの習慣でみた。近年ではそこそこよくみる手法ではある。もう7つの習慣でいいんじゃね?とも思ったりしたのだが、あれはそこそこ分厚い上に、要点が纏まっておらず、実務的ではない。その点、文庫で軽く要点が纏まっているので手が出しやすいのかな?と感じた。

7つの習慣は元々メモ術というより、ビジネスパーソンとしての心構えの側面が強いので、本書の内容もメモ術に特化した本ではない。とにかく書いてタスクを整理して捨てなさいというのが本書におけるメモ術の全てになる。

そして、多くの人は、そのメモを整理できなかったり、あちこちに点在してしまったり、無くすのだ……。もう鎌倉武士が戦闘前に名乗りをあげるようなものだ。手帳初心者あるあるな鉄板ネタである。

全体的に押し付けが多い?感じ。上から目線感がどことなくある。「私はこうしたから成功したのよ。だからあなたたちもこうしたら、スキルアップするわよ」的な書籍。典型的な自己啓発本だ~~~ふっふっふ~!たのしい!!!
自分と違う考えを批判的に書いていたり、SNSでのブロックの話など……。首を傾げる部分も多い。全部真正面から受けると病みそうなので、飛ばし読みで気になるところをつまみ食いするだけでいいと思う。

怖い絵2(中野京子

西洋名画に秘められた恐るべき怨念・冷酷・非情をとき明かす美術エッセイ本。前に読んだやつの第2段。逆走している気がするが、気にしてはいけない。

ホントこの著者、どんだけ引き出し持っているんだってぐらいある。絵画としても楽しいのだが、読み物としても楽しいし、ヨーロッパ文化の勉強にもなる。

本書で印象に残った絵画は

「泣く女」

有名なピカソの絵。私は現代美術はあまり知識がなかったので、ピカソの女性歴にまず驚いた。その様を体液を吸う蜘蛛に例えているのが、絵が怖いというより逸話が怖い。現代絵画は何を見たらいいのか、どこを見たらいいのかよくわからなかったので、解説が付いていると「あーそういうことだったのか」と腹落ちして楽しめる。ピカソを見る目が変った。

「ガブリエル・デストレとその妹」

一見ただの春画。しかし、その背景を紐解くと、この絵画が女性の死後に制作された場合、意味合いが変ってくる。ヨーロッパの歴史はミステリー小説みたいだと思った。背景を知っていると、なるほど怖い絵だと納得する。

「レカミエ婦人の肖像」
古代ローマ風ドレスを着た婦人画なのだが、当時この服装が大流行したが、実際は小氷河期と呼ばれる寒冷期。無理をして流行に乗り、風邪や結核で命を落とす人が出ていたという逸話に、田舎の女子高生を思い出した。私は雪山の田舎出身なので、ミニスカートの生足は本当に寒い。実際はスカートの上にキャラクターひざ掛けを巻いたり、スカートの下にジャージを履いたりしていたのだが、兎に角見た目の美を追求していくとこうなるんだろうなぁ……と思った。本当にお洒落は命がけだ。

余談だが、私は機能重視派だったのと制服に有難い事にパンツがあったので、冬は毎日パンツスタイルだった。でも、スノーブーツでの通学は認められていなくて通学が苦痛だった。雪国でスノーブーツ禁止って正気ではない。お陰でよく転んだ。

「精神病院にて」

ホガースの絵画なのだが、何も知らないとよくわからない絵になる。だが、私は元々医療系を勉強していたし最近は監獄の歴史を掘り進んでいたので、こういう時代があったこと自体は知っていた。現代では少し考え難い世界だが、本当にこんな時代があり絵画の題材にもなる時代があったのだとちょっとした感心を覚えた。

本文内の”精神の死ともいえる狂気に陥るのは怖い。それを見物にして娯しむ人の心も怖い”の一文に、私は深く同意する。SNSで炎上や批判の嵐になっているときも、同じような感覚になる。

この時代では精神病者と犯罪者の区別も曖昧で、性別も犯罪の内容も何もかにも同じ箱に放り込んでいた。自分が正しい、自分は正常だ、自分は大丈夫だと思って、高みの見物をしている時の人間が、本当は一番怖いのかもしれないと思う。

本書には、他書で紹介されている「レディ・ジェーン・グレイの処刑」も載っている。順番が前後してこそいるが、本書が初出だったようだ。背景も絵としても怖い絵画だ。著者はこの絵の難がある所も述べてこそいるが、何度も扱っているし展覧会での話を聞くに思い入れもある絵なのだろうなと思う。やはりこの絵にはインパクトと言うべきか、惹き付けられてしまう魅力があると思う。ただ、見開きで絵画が切れていないのはよいが、実際に本物を見た後だと物足りなさがある。また本物を見たいと思った。

怖い絵2

怖い絵2

  • 作者:中野 京子
  • 発売日: 2008/04/05
  • メディア: 単行本
 
Books esoterica 占星術の本 運命を支配する天界の神秘学(学研プラス)

占星術に付いてまとめたムック本。西洋と東洋に展開された「星占い」の歴史と実践のガイド。歴史が凄く長い。多分半分は占星術の歴史を解説している。苦手なタイプの歴史書文体で唸った。ただ、学術的な視点から本格的に学びたい人には基礎の基礎でよいと思う。実践の占いに関する部分は、上昇宮(ASC)下降宮(DES)天頂(MC)天底(IC)なども算出し、太陽・月・水星・金星・火星・木星土星までの天体の星座やアスペクト、ハウスなどの要点がまとめてある。古い本のせいか、天王星海王星冥王星などは記載はない。幾人かの制作協力・資料提供者からの情報を編集したのが本書なのだが、奥付に相当な人数の名前が並んでいてビックリした。熱意が凄い。

また、巻末には日本の宿曜占星術についてもまとめてある。新暦旧暦月日換算表がついていて便利。違うことは知っていたけれど、自分の誕生日は旧暦だといつになるのかとか考えたことなかったので、へーと思った。私は旧暦だと8月生まれで、十二宮も太陽星座と変わるんだな。つい最近まで月星座も知らなかったし、そもそも星占いで出てくる星座が太陽星座だとも知らなかったので、知らないことがたくさんあって楽しい。

すぐわかる 西洋絵画よみとき 66のキーワード(千足伸行

西洋絵画を理解するための代表的なキーワード66個を解説したのが本書。絵に描かれたシンボル(象徴・記号)・アレゴリー(寓意)・アトリビュート(持物や目印)などの約束事を簡潔に解説している。関連する絵画も実際に幾つか紹介されていて、初心者入門として一般的な知識が得られる。出てくる絵画も作者が偏りなく幅広い。ある程度知識があるとつまらないだろうが、聖書の約束事をよく知らない、絵画に詳しくない、ヨーロッパ史に詳しくないといった人には目新しい知識が多く楽しめる。

全ページカラー印刷なのだが、印刷の彩度が高すぎない?なんかパキパキしすぎている気がする……と思うのだけれど、この手の目はあまり高くないので元々こういう絵だったのかもしれない。寝込んでだらだら読むのによい。 

すぐわかる西洋絵画よみとき66のキーワード

すぐわかる西洋絵画よみとき66のキーワード

  • 発売日: 2008/11/01
  • メディア: 単行本
 
 迷ったら、二つとも買え! シマジ流無駄遣いのススメ(島地勝彦)

著者は「週刊プレイボーイ」を100万部雑誌にした元名物編集長。そんな著者が語る浪費論をまとめた本。

昭和なオヤジが憧れる金銭感覚という感じ。現代社会に生きてたのか全く想像出来ない内容。これだけ金銭感覚かけ離れていれば、若者はお金を使わないだとか○○離れとか言いたくなるのも分かる。

無駄遣いとしているが、ここで言う無駄遣いは自身が価値を感じたら値段も収納も気にせず買え。と言う話なので、それは浪費ではないと思う。本当にいいと思うメガネやウィスキー、万年筆や時計へお金をかけるのは文化への投資ではないか。

ただ、私とは金銭感覚が違いすぎるので、お付き合いはしたくないし、この人の妻にもなりたくない。景気の良い人生論で、参考にはならないとは思うが価値観は人それぞれ。これはこれでいいと思う。

”お金は使ってこそ、はじめて「武器」となるのだ。”この一文にはなるほどなと思った。