紙めくりて

本と文具好きのオタクがクリア冬のコスメで右往左往するブログ

2021.05.09~05.16 読了後の本感想走り書き

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偏頭痛と月経と肩こりがやばい(毎月恒例)

怖い絵(中野京子

 シリーズ逆走した怖い絵を解説した本書。3から読んできたけど、一番はじめに辿り着いた。多分結構昔に読んだと思うのだが……さっぱり記憶がないので新鮮な気持ちで読めた。一目で物騒な絵もあれば、分かると怖い絵もあって半々だと思う。流石にゴヤ『我が子を喰らうサトゥルヌス』は見てすぐに分かるぐらい怖い。

怖いは、本当に幅広い感情だと思う。何を怖いと思うのか。怖い分類されても、その中に色々な怖いがあるのだと思う。ティントレット『受胎告知』は見方や時代背景、宗教の知識がないとピンと来ない。

豊富な知識の引き出しとユーモラスな書き口で、何度読んでも読みやすい。昔読んだ本書は関西から引越しした時にお嫁に出したが、改めて読むとやはり面白い。大きな絵が見開きで切られてしまう点や文庫だと紙面が小さく、迫力が薄くなく難点はある。いつも読む本でもない。しかし、ふと思いついたときにまた手を出す気がする。紙で買い直すかなぁ……。やっぱり紙がいい。

本書で私が怖いと思ったのは、ドガ『エトワール、または舞台の踊り子』この絵は単純に構図と光と影の描写が見事だなと思っていて好きでもあるのだが、描かれた背景を知るとじわじわ来るタイプの怖さ。こういう怖いが結構好き。

ライト・オブ・ダービー『空気ポンプの実験』は画題テーマで個人優勝。こういう当時の科学や解剖やらの絵画は、感心と好奇心が勝ってしまい怖いに辿り着かない。こういう画題の人間どうしようもなくて、逆に好き。この感情の動きが周囲から見ると怖いのかもしれないが。

怖い絵 (角川文庫)

怖い絵 (角川文庫)

 
図鑑 世界の犬ー純血212種(小島豊治)

世界中の犬を紹介する図鑑。どこ見てもわんちゃん!かわいい!!

全ページフルカラーで、日本では見たことのないような犬でも1ページ以上紹介されており、内容と写真も充実感がある。構成もすっきりしていて、図鑑としては十分だが、内容としては面白みや尖った部分はない。それを図鑑として評価するか、書籍として面白みのなさを不足に思うかは、何を求めるかによる。

でも、わんちゃんかわいいいいいいいいいい!!!

どの子もキレイにグルーミングされていて、いい顔している。写真集としても滅茶苦茶楽しい。

図鑑 世界の犬―純血212種

図鑑 世界の犬―純血212種

  • 作者:小島 豊治
  • 発売日: 2012/10/01
  • メディア: 大型本
 
 アクセサリーの歴史事典 下 脚部・腕と手・携帯品(K.M.レスター&B.V.オーク)

古代から20世紀半ばまで、時代のファッションと共に移り変わる西洋の装飾品をアクセサリーごとにまとめた事典。上下巻で私は下のみ読んだ。下巻はタイトル通り、脚と手、服につけたり携帯するアイテムをまとめている。参照の絵画や実際の写真はフルカラーで絵の挿入がある。本文自体は歴史の流れに沿って、淡々と書いてある歴史書。事典のつもりで読むと事典ぽくない文体なので戸惑うかもしれない。西洋のアクセサリーが、単純にお洒落としてではなく、文化や情勢を伴って変化していったのが分かる。アクセサリーを網羅しているためか、上下に分けても知識が広く浅くな印象を持った。

違うんだ!私は推しの靴に付いて考えを深めたかっただけなんだ……!!

えぐいヒールが出てきたり、かと思ったら流行から廃れたり、足首を晒すなんて品格が足りないなどなど。今も昔もお洒落は忍耐が必要なんだなぁとしみじみした。

図解 写真とイラストでわかる! 人生がはかどる「ふせんノート」(坂下仁)

インスタでふせんノートが流行ってたなぁと思って、引っつかんだやつ。

あれ?この本読んだことなかったっけ?と思いつつ、あれ?やっぱり読んでない気がする?と首を傾げつつ読んだ。フルカラーで、滅茶苦茶薄い本。

しかし、ふせんノートってそんな考えることなく、全部ふせんに書く、ノートに貼る。終わり。みたいなシンプルなノート術?これノート術なのか?ノート関係なくね?

実際、勉強で集中して暗記したい付箋を外してまとめる。とか、順番を入れ替えるとか。そういう情報の動かしやすさはあると思うけれど。

ノリ面が多い!とか、ノリが強力で中々はがれない!とか言われても。

剥がせる以上は落とさない保証がないので、いやなんだよね……。実際、付箋を貼れるようなノートを持ち運べるかと言うと……微妙だし。フリクションペンも同じだけど、剥がせる!消える!!落とす!!って「便利だけど、消えるな!!!」って思ってしまう。職業病だと思う。

万人受けするメゾットではないけれど、試してみればいいと思う。私はしっくりこなかった。

図解人生がはかどる「ふせんノート」

図解人生がはかどる「ふせんノート」

  • 作者:坂下仁
  • 発売日: 2017/02/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
仕事と人生を激変させる インプットの教科書(金川顕教

適当にぶらぶらしていて目について手に取った本。インプット術メインの自己啓発本だった。薄いしサクサク読める。眠れない日にだらだら読むのにちょうどよい薄さ。

内容はどこかで読んだことがあるような内容が多い。インプットの本なのだが、すぐアウトプットが大事ともあり、アウトプット方法についてもある。インプットメインの本かと言うと、最終的には両軸バランスよくやる必要があるのだろうなと感じた。

出来るビジネスマンは仕事!仕事!仕事!!なイメージがあるけれど、芸術鑑賞や舞台。自分の感性を磨くインプットとして五感を意識して取り入れるとよいと書いているのが意外だった。同様にテレビやセミナー、サロンの話もあり、これは突き詰めると悪い情報商材に引っ掛かる人が多そうだから、どうだろうなぁ……と思った。

年収の10%をインプットのための投資に使うと言うのは、中々出来ないので意識したい。

アメリカの宇宙戦略(明石和康)

再び月や火星への到達を目指すと宣言したブッシュ大統領。中国などが台頭してくる中、宇宙開発を取り巻く事情。ミサイル防衛はどこまで現実的なのか。宇宙開発とアメリカの軍事、政治との関わりを書いた本。

タイトルから宇宙開発がメインの本かと思いきや、はじめにある通り「宇宙を通じて、現代のアメリカを読む」と述べている。著者は時事通信の記者であり、本書はワシントン支局長等の経験を生かしてアメリカの宇宙戦略を論じたもの。宇宙を通した、現代アメリカ論、もしくはブッシュ政権論を論じていると捉えると、本書はよく纏まっている。宇宙へのロマンや楽しさを期待して読むと、現実にはロマンよりも利権など、どろどろとした印象が強い。ミサイル防衛を宇宙開発や火星探索と一括りにして「宇宙戦略」とするのは、どうなのだろうか?とは思った。それは果たして本当に宇宙なのだろうか。

アメリカの宇宙戦略 (岩波新書)

アメリカの宇宙戦略 (岩波新書)

  • 作者:明石 和康
  • 発売日: 2006/06/20
  • メディア: 新書
 
怖い絵 死と乙女篇(中野京子

乙女って顔の表紙じゃねぇwソフィアの憤怒と威厳がすごい。夢に出てきそう。

過去に読んだ怖い絵シリーズを文庫用に加筆したものが本書。本書は怖い絵3を再編集したもの。ホーガスの「ジン横丁」が収録されている。ジン横丁は間違いなく怖い絵なのだが、この絵画の背景と含めて読み解くと現代への警句のようにも思えて、心に刺さるものがある。最近気付いたのだが、私は多分ホガース好きなのかもしれない。普段あまり作者で見ることがないので、新しい発見。

文庫になると持ち運びはいいが、やっぱり絵が小さくなってしまい見難くて仕方ない。しかし、持ち運び性はよい。読みやすいし。

絵画と歴史、神話をまとめて楽しめる西洋絵画エッセイ本。楽しい。やっぱり家にハードカバーで欲しいな……。

怖い絵 死と乙女篇 (角川文庫)

怖い絵 死と乙女篇 (角川文庫)

  • 作者:中野 京子
  • 発売日: 2012/08/25
  • メディア: 文庫
 
ヒト、犬に会う 言葉と論理の始原へ(島泰三

人間と犬、運命の共同体としての関係の特異性と起源を探ったのが本書。

著者は人類学教室出身のアイアイ研究家。私は圧倒的に犬が好きなので面白い読み物ではあったのだが、論理が飛躍している部分が多くあるとも思う。ピントのズレもあり、結局著者が何を主張したかったのか今一つ理解が及ばない。犬に関する知識や犬とヒトの関係に付いては面白い話が多くあり、読み物としては大変面白かった。

私が興味深い話だなと思ったのは、アインマラハの犬の節。1万2000年前のイスラエルのアインマラハ遺跡の墓からイヌ科動物の骨が出土している。この犬は人の頭骨の上前方に子犬が一緒に埋葬されていた。これは同時に死んだとは考えられず、ヒトの死後の付き添いとして殺され一緒に埋葬されたと考えられている。色々と作家の想像力を擽る逸話だったようだ。対して、日本の縄文時代早期には狩りに貢献したイヌを埋葬した例がある。こちらは歯が欠けた老犬で、天寿を全うしたものであろうと考えられる。中近東と日本では犬に対しての志向が異なっていると著者は考察している。

最近、日本における断耳、断尾の記事を読んだのだが、日本と西欧では犬や自然に対しての感覚が違うことをまじまじと感じられた。西欧では、犬は歴史と時間をかけて品種改良をしてきた。狩猟民族でもあり、自然は克服し、コントロールし管理するものという考え方が根底にある。この埋葬の話を見ても、犬は副葬品であり家族ではないのだろうと思う。対して日本は農耕民族の歴史が長い。多くの神様は自然から生まれ、自然=神様。人が管理していくものではなく、付き合っていくもの。との考え方がある。これは、宗教感からの関係もあると思う。日本人は非業の死を遂げた人は人を祟ると考え、恐れる。これは御霊信仰に繋がっていると私は思う。本書では、犬のみについて書いている。犬だけではなく、猫や他の動物。ヒトと自然の関わりから歴史を読み解いていくのも、また面白そうだと考えた。

怖い絵 泣く女篇(中野京子

同じく、文庫再編集版。これは怖い絵2を再編集し、2題追加したものが本書になる。

カバーは「レディ・ジェーン・グレイの処刑」もう表紙で優勝。この絵が使われた表紙たくさんあるけれど、やっぱり好きだわこの絵。実は、著者はこの絵に対しての批判も色々と描いているのだが、私は総合して好きなんだよな。著者は執行人を気の抜けたポーズとは言うが、背景を考えれば執行人も憐れみの眼差しを向けるのも分かる。後ろの侍女たちをオーバーアクションとは言うが、彼女達も当時を思えば悲観にくれるのもわかる気がする。主人が処刑された侍女たちはお先真っ暗だっただろう。

総合して、圧巻の絵画だと私は思う。もう一回実物みたい。くそーーーー。

絵画と歴史、神話をまとめて楽しめる西洋絵画エッセイ本。文庫だとやっぱり絵が小さいので、ハードカバーでほしい。絵が小さくて物足りない。文は安定の読みやすいエッセイ。本当にお手本にしたい。個人的に理想的な読みやすい文。写文でもしようかなと最近思っている。角川出版で怖い絵以外も出版しているようなので、作者読みをする。つくづく展覧会の図録を実家に置きっぱなしなのが悔しい。

怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)

怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)

 
イヌ どのようにして人間の友になったか(J.C.マクローリン)

1984年出版の本。イヌがどのようにして家畜になったのかまとめたのが本書。散文的で読み難い。タイトルがイヌなのだが、哺乳類の出現から語り始めて回りくどい印象もある。かなり古い出版なので、科学的な内容も今読むと首を傾げる部分も多々ある。散文を強引に物語にした感が否めなくて、薄目で読んだ。うーんしょっぱい。

著者は動物学者とはなっているが、学歴の紹介なし。サイエンス・イラストレーターともあり、何の専門家なんだ……?と最後に再び首を捻った。 ベッドで寝転びながら読むには若干しょっぱくて重い。

精神鑑定はなぜ間違えるのか?(岩波明

実際の裁判における、精神鑑定の事例検討をした書籍。著者は精神科医発達障害が専門。本書のあらすじには、”精神医学はいまだに未熟な学問である。精神疾患を確実に診断することが可能な検査指標はほとんど存在しない。したがって、法廷における「精神鑑定」に誤りが多いことも、ある意味当然なのだ。 さらに、「精神科医」自体の問題もある。精神鑑定を担当する精神科医のレベルは様々である。”とある。

あらすじの内容としては、私自身も確かに憂慮している点ではある。

ただ、本書の内容は実際の人の鑑定書や新聞、雑誌、書籍を引用し、かつ実名で記載していたりと守秘義務への配慮はない。裁判記録は確かに実名記載だろうが本書は書籍だ。私は法律方面の知識が浅いが、これは法律方面の書籍としては当たり前の状況なのだろうか。大きな疑問を覚えた。更に相手に会いもせずに勝手な診断をするのは、精神領域としてはあまり褒められた行為ではない。私の認識が誤っているのならお恥ずかしい限りなのだが、欧米では禁じられている行為だったと認識している。

また、タイトルには「なぜ間違えるのか?」とあるが、本書では実例を並べているだけであり、タイトルへの著者からの回答はない。あらすじや冒頭で、日本の精神鑑定のレベルが低いのは、2流3流もしくはそれ以下の精神科医が基本的な診断を理解せずに行って居ると指摘している。まさか、それが著者からの回答なのか?

そもそも当時と今とでは考証も進んでいるのは事実で、過去の結果を引っ張り出してのあと出しじゃんけん。書籍を使ったマウンティング行為に感じる。

裁判文書自体は個人的に苦手意識があるが、文章ではある。頭痛で寝込んでいる時のお供として読んだ。平時なら恐らく読まない。