紙めくりて

本と文具好きのオタクがクリア冬のコスメで右往左往するブログ

2021.05.30~06.12 全7冊、読了後の本感想走り書き

スポンサーリンク

 資格の勉強始めたり、血祭りで不調が来たり、なんだかんだ本が読めなかった。くそこん

紙の世界史 歴史に突き動かされた技術(マーク・カーランスキー)

世界の「紙」の歴史をまとめた本。日本の和紙にも記述ある。

本書では、「記録する」というのはヒトだけの特性と着目する。紙は人類史を作り上げる礎となった。世界史において活版印刷で知られるグーテンベルクだが、本書では本人に関する情報は少ない。ちょっと意外に感じたが、活版印刷は厳密には紙の歴史ではない。本書では紙をテクノロジーの一つと捉える。冒頭の記述には”テクノロジーが社会を変えるのではく、社会の方が社会のなかで起こる変化に対応するためにテクノロジーを発達させている。”とある。紙は古いテクノロジーで、印刷は新しいテクノロジー。著者の主張を見ると、活版印刷によって紙を活用する選択肢が一つ増えたと考えられるのかもしれない。パソコンやITの発達が近年めまぐるしいが、やはりテクノロジーとして選択肢が増えただけ。紙はまだまだなくならないのだろうなと感じた。

結構しっかり歴史書で、若干文体が苦手だった。原題は「Paper」また、世界史くっつけて邦題タイトルを作っている。またか。慣習?でも、表紙に「紙」とだけ提示されても今度は分かり難いし……翻訳って難しい

「馬」が動かした日本史(蒲池明弘)

最近馬が流行りだ。うん。

と思って反射で手に取った本。馬に関する日本の歴史をまとめた本書だが、著者は歴史学者ではなく歴史ライター。馬が持ち込まれたのは5世紀ごろ。日本史と馬の関わりは歴史書としてはよく語られるジャンルらしい。

本書はすごく読みにくい。日本史とはあるのだが、地層の話になったり地域ごとのまとめになっていて、時代があっちこちに前後する。後半は著者の自慢?分からないけども、タイトルから期待したような内容ではなかった。史というよりはコラム。

何冊目かの今年挫折した本にランクイン。

<新版>ユダヤ5000年の教え(ラビ・マービン・トケイヤー)

ユダヤ教聖典「タルムード」を中心に、ユダヤ教の他の教典や言い伝えの金言を厳選しまとめたのが本書。それぞれ「ビジネスで成功するには」「蓄財するには」「知恵を磨くには」「人付き合いで失敗しないためには」などの章に分類されている。各金言には簡単な解説も付いているが、日本人の感覚だと生活背景的にピンと来ないものも当然ある。日本人は豚も食べるしね。

私はキリスト教の入口を簡単に触った程度の知識しかなく、ユダヤ教に付いてはあまり知識がないが入門の書籍として楽しめた。これは参考にしようと思うような金言もあった。現在ユダヤ人にはお金持ちや成功者が多いと本書でも触れているが、小さい頃からこんな知恵に触れていれば、広い視野をもって生きていけそうだと思う。

以下、本書中、特に参考にしようと思った金言まとめ。

  • 毎日、今日があなたの”最後の日”だと思え。毎日、今日があなたの”最初の日”だと思え。
  • 人は金銭を時間より大切にするが、”失われた時間”は金銭では買えない。
  • どれほど”高価な時計”でも、刻む一時間の長さは同じだし、どれほど”偉い人”でも一時間は変わらない。
  • 成功の扉を開けるためには、”押す”か”引く”かしなければならない。
  • 貧乏は”恥”ではない。しかし”名誉”だと思うな。
  • ”してしまった”悔やみより、”したかったのにしなかったこと”のほうが、後悔が大きい。
  • 鳥を籠から逃がしても、また捕らえることができるが、”口から逃げた言葉”を捕らえることはできない
新版 しあわせ占星術 自分でホロスコープが読める本(まついなつき

ホロスコープの書き方&読み方をマンガでわかりやすく解説。占星術の入門書。

2000年に初版が出版されて、改訂版、新版、と版を重ねている。

漫画を含めた解説で、入門書と紹介されているだけあってわかりやすい。ホロスコープの書き方は、本当に簡易なものでより精密なものだと微妙に異なる場合もある。解説は精密なものに対応してはいるので、本書でも触れられている通りインターネットのサイトなどで自分のホロスコープを作ってしまって。それを読み解くのに使うといいのかなと思う。4元素・3区分から始まるので、他書に比べると親切設計でとっつきやすい。ある程度分かっている人だと、物足りないんだろうなぁとも思う。

私は、自身の獅子座らしい獅子座だが、火元素っぽくはない。が、ホロスコープをちゃんと確認してみたら、持っている元素自体は土が一番多かった。むしろ露骨に土に偏っていた。無駄に納得した。リラックスできる空間の項目にも納得。そこも獅子座ぽくないよな~と思っていた。自身が癒される場所を順番に並べてみたら、その通りだった。何もおかしくなかった。

本書自体は分かりやすいのだが、土星より外の惑星はよくわからないし、1度読んでみても「あ、分かったー!」とはならない。本書も終始首を捻りながら読んでいた。何度も読まないと理解できなさそう。占星術、考えることが多すぎる。しかし、雑誌の星座占いが当たらないのは道理だなと納得できる。これ読めるようになると楽しそう。

中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇(中野京子

「難しい」と思われがちなキリスト教の名画を解説した本。他書よりもラフな文章で、痛快な砕けた文章。タイトル通り、旧約・新約聖書のどちらの絵画に付いても解説している。絵画の色合いもつかめるフルカラー。

旧約聖書は家族関係がややこしく、新約聖書は人間関係に首を捻るのだが、丁寧に関係図も付いている。聖書を殆ど知らない人でも「ふーん。そうなのかー」と読むことが出来る。実際、聖書は普通に読むだけではなくどういった意図の文なのか。読み解き方まで教わらないと読み解けないと思う。本書では、難解な聖書を聖書の宗教観とは無縁の日本人でも、ライトに読み解ける。

実際の展覧会で実物を見たことがある絵画もあったが、解説を聞き視点が変わったのはブリューゲルバベルの塔」何も知らないで見たときとは印象が変わった。

難解なテーマの絵画が、聖書ではどんなストーリーなのか。登場人物が何を意図されているのか。初心者でも解説を聞けば分かりやすく、流石の内容だった。

中野京子と読み解く 名画の謎 陰謀の歴史篇(中野京子

名画の謎シリーズの3作目。フェルメールラファエロゴヤブリューゲルなど、時代を代表する名画を解説した本。権力へと強欲な手を伸ばし、運命に翻弄され、恋に身を焦がす人々の営みがときに鮮やかに、ときに冷酷に描かれている。

サブタイトル部分の「陰謀」はちょっと首を捻る。だが、いつもの読みやすい文章も、深い西洋史知識も健在。怖い絵シリーズよりは軽快でリズミカル。

該当の時代がヨーロッパでは激動の時期で難解なためか、それぞれの絵画にきちんと年表でのどこに該当するのか補足記載がある。世界史や西洋史にあまり詳しくないので、とても親切でありがたかった。

安定のフルカラー。印刷の質は、お値段相応か。だが、この値段で名画を自分のペースでゆっくり眺められるのかと思えば安い。様々な愛憎や権力争い、それに伴う恐怖。登場人物の背景が分かれば、より篭められた作者の意図も読み解きやすくなる。作者買いした本だったが、やはり面白く楽しく読めた。

中野京子と読み解く 名画の謎 対決篇(中野京子

名画の謎シリーズの4作目。同様の題材や図柄なのに、その意味や世の評価は時に正反対になる。2枚の絵を比べる面白い視点で解説した本。

冒頭から「ストレート VS ゲイ(死んでもいい)」としてクリムト「接吻」と、カラヴァッジョ「聖マタイの殉教」を解説する。この冒頭の内容で挑戦的な書籍だと感じた。

あとがきでも著者が触れているが、この視点での解説はあまり触れられてこなかったようだ。ヌードは芸術か、スキャンダルか。女性のヌードを描くことが禁じられ、裸体を描くためのお題目としての題材があった。ならば、艶かしい男性のヌードを描くことは禁じられたのか?挑戦的でありつつ、「そんな視点もあったのか!」と膝を打つ小気味よさもある。

レーニ「聖セバスティアヌスの殉教」で題材になっている聖セバスティアヌスは、世界最古のゲイ・アイコンと紹介されている。え、はい。なるほど!?三島由紀夫の「仮面の告白」にも詳しく語られているそうなのだが、三島は同じポーズで写真を撮っているそうだ。なる…ほど?全く知らなかった世界を覗いてしまった感がすごい。

フランソワ・ブーシュ「ゼウスとカリスト」は解説を読めば読むほど、ゼウスこの野郎……!と言う気持ちになる。憧れのお姉様だと思って抱き寄せられたのに、実際は自分の娘に変身した父親(ゼウス)だった。パワーワードすぎて、ちょっと意味が分からない。世界始まりすぎだろ。ゼウスこの変態野郎……その後の顛末も救いがなさ過ぎる。ギリシャ神話色々とすごい物語だ……。

個人的には、ジョゼフ=マリー・ヴィアン「キューピッド売り」が面白かった。羽をつまむように気軽に扱われているキューピッドと、それに対してのキューピッドのパフォーマンス。何も知らないとよくわからない絵画なのだが、読み解くと卑猥なニュアンスも含みつつ作者のユーモラスも感じられて中々に面白い。ちょっとこのキューピッド好き。

2つの作品を対比させながら論じるのでは、解説に物足りなさが残るのではないかとも思ったのだが、これはこれで面白い。絵画の解説としては物足りなさを感じる部分もあったが、当時の背景を知り鑑賞の視点の引き出しを増やすにはとても有意義だった。